チャイコフスキー、ヒグドン「ヴァイオリン協奏曲」ヒラリー・ハーン、ヴァシリー・ペトレンコ指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィル
ハーンがようやく去年チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のCDを出した。さすがはハーン、ソロ・ヴァイオリニストなら弾き飽きているだろうチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をひとひねりして演奏してみせた。
チャイコフスキーはもちろん濃厚にロマンティックな音楽だが、ハーンはそのロマンティシズムに自分が没入して一人称で語るのではなく、完全に相対化してみせたのだ。「ロマンティックな音楽を無邪気に演奏できた時代を懐かしむ」ロマンティシズムという、いわばメタ・ロマンティシズム(そんな言葉があるかどうか知らないが)だ。
それによって、19世紀から数え切れないほど演奏されてきたこの曲を、21世紀に生きる音楽家と聴衆がいまさら演奏し、聞くことの新たな意味を付け加えている。
ただし、その「メタ」を感じ取れない聴き手にとってはただのローキーな演奏に聞こえてしまうかもしれない。ハーンはいつものように完璧なテクニックで一音一音を正確に奏でる。テンポやダイナミクスを恣意的に動かすこともしない。しかし、その一音一音に意味をしっかりとこめて演奏しているのだが。
そういえばハーンのtwitterは、ヴァイオリン・ケースが語るという形式をとっている。ここにも一歩離れた所から物事を捉えることができるハーンの知性が反映しているのだろう。この人は賢いね。
なお、チャイコフスキーとカップリングされているヒグドンは、残念ながら後世に残る名曲だとは思えなかったが、fillerとしてはまあまあ悪くないのではないか。
Higdon & Tchaikovsky: Violin Concertos
Hilary Hahn, violin
Vasily Petrenko, conductor
Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
Deutsche Grammophon 4778777







